越前漆器組合の販売部で主催し、11月12日夜と13日お昼の2回行われた「越前漆器で奏でる日本の味」。私は12日夜の部に出席させてもらいました。
このイベントは、東京會舘の鈴木総料理長に日本料理のコースをお願いして実現したものです。会場は鯖江シティーホテルにて開催されました。
今回のこのイベントでは特別に越前漆器に全てのお料理を盛り付けるということで、この2日間のために販売部の皆さんで器を持ち寄り、鈴木総料理長による和食のコースが実現しました。
こんな機会はなかなかないと思い、早々に申し込みこの日を迎えることができました。
鈴木総料理長の特別講演ということもあり、和食にまつわる貴重なお話を聴きながらお料理を堪能するという贅沢な時間。
お話の中で、「ものづくりは人に喜んでもらうためにする」とおっしゃっていて、同席していた熟練の職人さんも大きくうなずいていらっしゃいました。同じモノづくりをする者同士通じ合うものがあるんでしょうね。
最近では、日本の食卓に朝から晩までカタカナの食事が並ぶということも珍しくないとおっしゃっていて、例えば朝食にトーストしたパン、昼食にラーメン、夕食にハンバーグといった具合で、日本語の料理がどんどんなくなってきてる世の中だと。妙に納得しながら聴いていました。
なんせ、鈴木総料理長のお話は、食にまつわるウンチクがすごくて、お話の内容も流暢で、いろんな経験をされていることが伺われます。聞くところによると、前日まで名古屋のデパートでイベントがあり、鯖江でのイベントのあとは、有田焼の産地で国宝級の有田焼にお料理を盛るというイベントのため佐賀県に移動されるとか!全国飛び回って和食を伝承されていらっしゃるようです。
お料理の内容は、どれをとっても手間がかかるものばかりでした。
時間をかけて丁寧に作られたお料理
お刺身も一手間も二手間も加わったものでした。
そういえば、漆を濾したものをそのまま乾燥させて箸置きとして使われてました。
今年と来年の干支にちなんで「去る(申)年、来るトリ」と名付けられたお料理
大和芋で形作られたトリと、チーズで形作られたサルがとても愛らしかったです。
順番にお客様テーブルを回られて挨拶をされていた鈴木料理長が私たちのテーブルに来られたので、思い切って「人参のもみじやサルやトリはこういう型があって切り抜くのですか?」と質問してみました。
お答えは、予想に反したものでした。
「一つ一つすべて若い料理人(お弟子さん)に切らせています。」
実は写真には撮っていませんが、人参のもみじは今まで見た中でかなり細かい細工がされていたんです。
お話の続きで、
「こういった作業で何を教えているかわかりますか? この技術を教えているのではなく、若い人に我慢を教えているんです。どんなふうに切っても味は同じですが、細かい作業を包丁や彫刻刀で切らせています。道具はとても大事で、道具が錆びていると食材も美味しくなくなります。だから包丁は毎日毎日研いでから始めるんです。」
料理の世界は昔ほど厳しくないのかと思いきや、こちらは相当厳しい修行なのだろうなとこのお話で感じました。鈴木料理長の元で育つ料理人さんは、どこに出てもやっていけるんでしょうね。本当にすごいです。
この話を一緒に聴いていた熟練の職人さんが、「漆器職人もおんなじです。」としみじみ答えていたのがまた印象的でした。
もう一つお話の中で興味深かったこと。それは、
「今、美味しいと言ってくれなくても良いんです。いつかどこかで食事した時に、あそこのお料理は美味しかったな〜と思い出して言ってもらえると料理人冥利につきて、すごく嬉しいんですよ。」
一つ一つのお話に深みが加わって、料理長が作られるお料理もおんなじだけ深いものがあるんだろうとつくづく思ったのです。
最後の最後に一緒にお写真を撮っていただいて、会場を後にしました。
美味しかったという一言で終わらせるのは申し訳ないのですが、大変ご馳走さまでした。