業務用の漆器に携わる一人として伝えられること

本物って何?

突然ですが、皆さんにとって漆器のイメージってどんなものでしょうか?

漆器=木に漆を塗って作られたもの。日本の伝統工芸的な要素が大きい。

そんなイメージが一番に来るのではないでしょうか。漆器は英語で「JAPAN」と言われるほど日本の文化には欠かせないものです。

私は、ずっと自分の中にある「矛盾」を抱えていました。

塗り物食器は、本当なら木の温かみを感じながら、漆の艶を楽しみながら、日本の旬の食材を盛って味わえるものであってほしいと思うのですが、現実はプラスチック製の塗り物食器を生産して販売しているという自分がいるということ。

業務用の漆器と呼ばれるものは、木製よりも樹脂製のいわゆるプラスチック製品が圧倒的に多いのです。これは機能面、価格面、生産量などいろんな理由があるからですが、私が会社で働くころはすでにプラスチック製品全盛期の時代でした。越前漆器産地は、業務用の漆器の活路を見出したことが産地の存続の一つの理由でもあるのだと思っていますし。

木製だけにこだわらず、その時代に合った業態転換をしてきたからこそ今の私たちがあるのだと。

漆器のプラスチック製品は本物ではない?私は本物ではない漆器を作って販売しているのだろうか?

そんなことを考えたこともありますが、ある時、塗り師さん(化学塗装専門の)と話してて思ったのが、この人も職人として本物だなって心から思った出来事がありました。

生地に塗装を施す前に、生地の材質は何か?素材を活かすためにはどうしたらいいのか?焼付け温度や乾燥時間はどのくらいが適しているか? しっかりと考えて仕事をしている塗り師さんの姿を見ることで私の中の「本物」という概念が変わりました。

木製もプラスチックも、漆も化学塗料も、全てが本物なんじゃないかって。というか、本物とか偽物とかと区別すること自体間違っていたのかなと。

 

基本は「使うお客様が喜んでくれるか?」ということ

この産地には、木製もプラスチック製品も、漆塗りも化学塗装もいろいろあって、日本全国(最近では海外に向けても)適材適所に使われています。

私たちは、自分が満足するためだけに作っているのではなく、お客様が満足して喜んで使ってもらうために作っているんだということを意識するようになりました。

そうなると、無謀な安売りはできなくなります。安売りは敵です。今後、安ければ売れるという時代でもないですし。そんなことを続けていても誰も幸せじゃないから。

かといって、高く売っているつもりもありません。どうしたら少しでも求めやすい価格になるかと考えて工夫することは商売上必要なことです。

私たちが商売を続けていくためには、生産に携わってくれている下請けさんや職人さんが喜んで仕事ができる環境を作らなくてはいけないし、買ってくれるお客様が喜んで使ってくれるものを生産しなくてはいけないなと心から思うようになりました。

こうして書いていると、きれいごとのように思うかもしれませんが、私の人生は折り返し地点を過ぎているわけで、これからはこうしていきたいと書くことで、さらに自分の決意も新たになります。

理想と現実の狭間で、いつも矛盾だらけで、本当に嫌になることもしょっちゅうだけど、心の芯だけは一本通しておきたいなと、そんなことを考えながら今日のブログを書きました。

投稿者:

ooishi

実家の漆器屋で働いているワーキング主婦。夫と二人の子供の4人家族です。 仕事や趣味を思いっきり楽しむために、日頃興味のあることをこのブログに綴っています。