当社の業務用漆器の始まりは木製の寿司桶だった

当社は創業1788年の漆器屋で、今年で225年を迎えました。

225年前というと江戸時代(天明8年)。1782年〜1788年にかけて天明の大飢饉が発生し、近世では最大の飢饉と云われています。天明の大飢饉が終わる頃に初代廣瀬嘉左ェ門が創業しました。創業当時は木製椀の下地から上塗りをしていたそうです。江戸時代から明治・大正・昭和にかけて、庶民が家庭で使うお椀を製造していました。

戦争が終わって日本は高度成長期の時代に入ります。私の祖父(6代目)は戦争が終わって家業を継いだ時、なかなか思うようにお椀が売れなくて困っていたそうです。

そんな時、東京築地のあるお客さんが木製の漆塗りの寿司桶を作って販売しないかと提案してくれて、作ったのが 下の写真の寿司桶です。

木製の漆塗り寿司桶

 

昭和20年〜30年代にかけて製造していた寿司桶が少しだけ蔵に残されています。

この寿司桶がお陰様でとてもよく売れたそうです。おそらく当社の業務用漆器の製造が始まったのはこの木製の塗りの寿司桶がきっかけだったのではないでしょうか。

当時、白木の寿司桶は別の産地で作られていましたが、塗りの寿司桶はあまり出回っていなかったらしく、白木と比べて盛り付け部分に食材の色がうつらないからいいという理由などでたくさん買っていただいたと私の父が懐かしく話していました。

しばらくして樹脂の漆器が生産され始め、大量生産が可能になり、価格もぐんと安くなると、価格の高い漆塗りの木製寿司桶は次第に売れなくなってしまったのですが。

この越前漆器の産地では、寿司桶にかぎらず、お椀・お盆・お膳など、業務用として使われる漆器を樹脂成型で生産するようになっていきました。こうして業務用漆器の産地として知られるようになったのです。

 

この木製の寿司桶は約60年前に作られたものですが、とてもしっかりしています。軽くて丈夫で、今同じものを生産すると一体いくらになるんだろう?おそらく当時の何倍もすることでしょう。

 

この寿司桶のおかげで、当社の歴史の一端をうかがうことができました。私は今まで225年続いてきたという歴史をあまり振り返ったこともなかったし、どちらかというと完全に軽んじていました。祖父が生きているうちにもっといろんなことを聞いておけばよかったと今頃後悔しています。

いくつもの時代にわたって家業を守り続けてきた重みを今更ながら心にずっしりと感じている今日このごろです。

 

投稿者:

ooishi

実家の漆器屋で働いているワーキング主婦。夫と二人の子供の4人家族です。 仕事や趣味を思いっきり楽しむために、日頃興味のあることをこのブログに綴っています。

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